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キラキラ

第23章 🌟🌟🌟

「……ミヤさんのこと?」

「……はい」

怪訝な顔をする俺に、ダイゴが戸惑うように頷いた。

ミヤさん……今、俺が一番心奪われてる人。

サトコ様には申し訳ないが、大の国には、ミヤさんに会いたいから行ってるようなものだ。

白い肌に、整った鼻梁。
柔らかそうな髪の毛を整えて、いつも控えめにサトコ様の後ろに立っている。

時々交わす挨拶や事務的な会話だけで、俺はもう有頂天。

決して男好きなわけではないし、サトコ様も素敵な人だと思うけど、俺のドストライクはミヤさんなんだ。

……そのミヤさんが、倒れてるって?

「……な、わけねーじゃん」

そもそも、ここは櫻の国。
普通にありえないだろ。

俺は、一蹴して、この話題を終えようとした。
だけど、ダイゴは何故か食い下がった。

「でも……ちょっと………気になるんです…すみませんが確認してもらえませんか?」

「……」

ダイゴは頭が良くて、機転のきく男だ。
嘘をついたり、大げさにものをいうやつでもない。

俺は、ダイゴの必死な顔をみつめた。

「……分かったよ」

頷いて、馬車を降りた。





なるほど。

前方50メートルほどの場所にうつ伏せで倒れている人間が見える。

「……」

少しだけ、ざわっと何かがひっかかった。

ずっとずっと目で追い続けている愛しい人。

決してこの胸の内を明かすことはできないけれど、今の俺の心にいつも住んでいる人。

……確かに、あの人の背格好に似てるといえば似てる。

流行る胸をおさえて、一歩一歩近づいた。

ところが近づくたびに、まさか、から、もしかして、に気持ちがかわりゆくのが自覚できた。

汚れている衣服は、遠目にも高価そうな質感。

進行方向を遮るように、あちら向きに顔を向けて、横になる体は、細くて。

なんで……?

「……」

なんでこんなとこにいるの?


そっと、傍らに膝まづく。

もはや、目の前にいるこの倒れている男は、ミヤさんにしか見えなくなってきていた。

あとは、顔を確認するだけ。


「……」


震える手で、その乱れた前髪をそっとかきあげる。


「……ミヤさん!!」

俺は思わず叫んでた。

倒れている男は、ダイゴの言う通り、大の国のミヤさんだった。

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