
キラキラ
第24章 バースト5
**********
昌宏さんは、都心寄りにあるタワーマンションで暮らしてる。
終業後、会社をでた俺は、駅前のケーキ屋で、昌宏さんの好物のモンブランと、俺の好きなチョコレートケーキを買い、電車に乗った。
居眠りをしてるサラリーマンの横に座り、夜の闇に包まれつつある窓の外を見つめた。
ガタンガタンという揺れにあわせて、軽く目を閉じる。
つきあうようになって、もうすぐ三年がたつ。
最初は押しきられるように始まったこの関係も、今では、彼なしの世界は考えられないほどになった。
俺より大分高い位置にあるその意志の強そうな大きい瞳は、時に鋭く妖しく光り、時に何もかもを包み込むように甘く輝いて、俺を捉えて離さない。
俺を甘やかし、包み込み、全身全霊で愛してくれてる。
……大切な大切な人だ。
だけど、やっぱり恋人が男性だと、翔に打ち明けるのは緊張した。
黙ってるのもありかと思ったけど、それはなんだか、隠してるみたいで嫌で。
いずれ分かることなら、なんでも話しておきたい、と思ったから。
でも、ドキドキしながら話をした時の翔は、……笑ってた。
「良かったね」
と。
「その気持ち大事にしなよ」
と。
我が弟ながら、その言葉にすごく、感動した覚えがある。
その弟にできた恋人が、また男というのも不思議なものだ。
俺は、昨日の焦りまくった潤の顔を思い出して、思わず笑ってしまいそうになった。
さすがに翔は、なに食わぬ顔してたけど、あの潤にはポーカーフェイスは無理だよな。
上気した頬に濡れた唇。
何をしてたかは、火を見るより明らか。
潤んだ瞳は、高校生のガキんちょにしては、結構な色気だった。
翔と潤の恋も……うまくいくといいな。
あ、かずと相葉くんもか。
男だらけだな、うちら。
カサリと、ビニールの音をたて、ケーキの袋をもちかえた。
アナウンスは、まもなく昌宏さんの家に近い駅に到着しようとしていた。
俺は、温かい気持ちで、再び窓の外に目を向けた。
あっというまに暗くなった夜空は、都会の光でいまだほのかに明るい。
既に帰宅してる昌宏さんは、大きな鯛をさばいてくれてるはずだった。
楽しみだな。
鯛も。
昌宏さんに会えるのも。
