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キラキラ

第24章 バースト5


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昌宏さんは、都心寄りにあるタワーマンションで暮らしてる。

終業後、会社をでた俺は、駅前のケーキ屋で、昌宏さんの好物のモンブランと、俺の好きなチョコレートケーキを買い、電車に乗った。

居眠りをしてるサラリーマンの横に座り、夜の闇に包まれつつある窓の外を見つめた。
ガタンガタンという揺れにあわせて、軽く目を閉じる。

つきあうようになって、もうすぐ三年がたつ。

最初は押しきられるように始まったこの関係も、今では、彼なしの世界は考えられないほどになった。

俺より大分高い位置にあるその意志の強そうな大きい瞳は、時に鋭く妖しく光り、時に何もかもを包み込むように甘く輝いて、俺を捉えて離さない。

俺を甘やかし、包み込み、全身全霊で愛してくれてる。

……大切な大切な人だ。

だけど、やっぱり恋人が男性だと、翔に打ち明けるのは緊張した。
黙ってるのもありかと思ったけど、それはなんだか、隠してるみたいで嫌で。
いずれ分かることなら、なんでも話しておきたい、と思ったから。

でも、ドキドキしながら話をした時の翔は、……笑ってた。


「良かったね」

と。

「その気持ち大事にしなよ」

と。

我が弟ながら、その言葉にすごく、感動した覚えがある。

その弟にできた恋人が、また男というのも不思議なものだ。

俺は、昨日の焦りまくった潤の顔を思い出して、思わず笑ってしまいそうになった。

さすがに翔は、なに食わぬ顔してたけど、あの潤にはポーカーフェイスは無理だよな。

上気した頬に濡れた唇。
何をしてたかは、火を見るより明らか。

潤んだ瞳は、高校生のガキんちょにしては、結構な色気だった。

翔と潤の恋も……うまくいくといいな。

あ、かずと相葉くんもか。

男だらけだな、うちら。


カサリと、ビニールの音をたて、ケーキの袋をもちかえた。
アナウンスは、まもなく昌宏さんの家に近い駅に到着しようとしていた。

俺は、温かい気持ちで、再び窓の外に目を向けた。
あっというまに暗くなった夜空は、都会の光でいまだほのかに明るい。

既に帰宅してる昌宏さんは、大きな鯛をさばいてくれてるはずだった。

楽しみだな。
鯛も。
昌宏さんに会えるのも。





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