キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
「………どしたの、この怪我」
これが本題だと言わんばかりに、翔が、心配そうに大野の頬に触れようと手を伸ばした。
すると、鋭く手をはらわれた。
まるで猫が威嚇するようだ。
「………」
翔が、はらわれた手で、ぎゅっと拳をつくった。
「………触んな」
大野が小さく吐き捨てた。
「でも」
「………ほっとけよ、翔。どーせ喧嘩だろ」
こんなやつに構おうとする翔は、つくづくお人好しだ。
俺は、ため息をついた。
入寮日に、衝撃的な出会いをした大野は、どういうわけか、俺………というか、俺と翔に縁があり。
寮の部屋は隣り合わせ。
クラスも同じ、であった。
最も、向こうには、仲良くしようというような、歩み寄る気配はまったくないようで。
俺たち………いや、学校全てに一線ひいているような態度に、誰も入っていけないような状態だった。
この大野という男は、一言でいえば問題児。
学校をサボることはもちろん、喧嘩も、学内外問わず、日常茶飯事。
教師泣かせの生徒であることは、今や周知の事実であった。
こんなやつがどうしてこの嵐学園にはいってきたのか、いまだ謎。
ただ、噂では、ひとつには、こうみえて勉強はそこそこできるらしいということ。
さらには、学園の中枢と繋がりがあり、やめさせようにも簡単にはやめさせられない、という話だ。
どこまでが本当かわからないけれど………。
「それ、手当したほうがいいよ。その肘もすっごい血がにじんでる」
翔の気遣う声に、われに返る。
大野は、めんどくさそうに立ち上がった。
「………うるせぇな」
「こんな時間に帰ってきたって、寮長にいうよ」
「言いたきゃいえよ」
「長瀬さんにいうよ」
「言えば」
「茂子さんにもいうよ」
大野の動きが止まった。