キラキラ
第26章 10カゾエテ ~Count 10~
こちらに、不機嫌そうに歩いてくる金髪………あれは大野。
こんな時間に、帰寮って。
寮則まるで無視だな。
一年だろ?お前。
感心すらしながら、じっと見つめてると………ふと、その姿の異変に気づいた。
少し伏し目がちに口を尖らして歩いている…その口の横には大きなあざがみえる。
よくよくみれば、服もあちこち泥だらけで、まさしく喧嘩してきました、と言わんばかりの風貌だった。
「ちょっと」
黙って通りすぎるのかと思いきや、お互いに近づいたタイミングで、翔が大野に声をかけたもんだから、驚いた。
ところが、大野は、一瞬だけ肩をゆらせたものの、チラリともこちらを見ず、がん無視でそのまますれ違おうとする。
翔が、静かにもう一度声をかけた。
「ねぇ」
「………」
スルー。
おお………感じ悪。
清々しいくらいの無視だな。
耳ねーのか、おまえは。
若干、イラっとした俺の横で、やむなく、翔がそのまま通りすぎる大野の腕をとった。
瞬間、大野がすごい勢いで腕を振りほどこうと身をよじった。
「わ」
翔は、勢いあまってよろめき、慌てて俺が抱き止める。
「………おいっ!」
カッとして、思わず大野の薄い肩を掴んだ。
大野はうるさそうに顔を歪め、もう一度身をよじった。
俺がはなすまい、と力をこめたら、大野の反対側の拳がとんでくるのがみえて。
反射的に体を傾け、気がつけば足で蹴り倒してた。
ドサッ
鈍い音をたてて転がる大野に、翔が慌てて駆け寄る。
「………だ、大丈夫?」
大野が、半身をゆっくり起こしながら、ギラギラした目で俺を睨んでくるが。
いやいや。怒るとこじゃねーだろーがよ。
俺は、けっとした思いで、だるい顔をつくってみせた。
「………ってぇな、こら……」
「は?やらなきゃ、やられてたし。ってか耳ねぇの?お前。」
「………あ?」
「あ、目がねーんだ」
「………黙れや」
「ちょっと!ここで喧嘩はやめてよ!」
翔が、焦ったように怒鳴った。