
キラキラ
第27章 かげろう ~バースト6~
「かずじゃん。すごい偶然」
「潤くん」
俺も、にこりと笑って手をふった。
潤くんは、まわりの友人たちに、じゃあな、というように手を上げ、まっすぐこちらに向かって歩いてきて、あいてる俺の隣の席にすべりこんだ。
「いつもこの時間?」
ふわりと鼻を掠める爽やかな香りとともに、潤くんがたずねる。
ん?…この香り、翔さんのと一緒だ。
俺は、よく知る香りにくんくんと鼻をならした。
「……かず?」
黙ってる俺に、潤くんが怪訝そうな顔になった。気がついて俺は、急いでううん、と首を振る。
「今日はね、いつもより一本早いんだ」
潤くんは、ふうん、と頷いた。
そんな彼の横顔を盗み見る。
静かに微笑みを浮かべる彼は、相変わらず男前。
(……にしても)
最近ますます艶っぽくなった潤くん。
翔さんと付き合い始めた頃も感じたけど、二人の関係が、より深くなってから、さらにさらに、色気が増してる気がする。
出会った頃は、泣き虫なガキんちょだったのに。
サナギが蝶になるように……見事に化けたものだ。
長い足を組み換える事ですら様になってて。
二人から同じ香りがするなんて、どうなんだよ?
「……」
俺は、上目使いに潤くんを見た。
危険だなぁ…この人。
自覚がなさそうだから余計に危険。
翔さん、分かってんのかなぁ。
絶対一人にしちゃダメな人だよなぁ。
そんな俺の考えてることなんて、一ミリたりとも
分かってない潤くんは、無邪気ににこっと笑った。
「俺、今からかずん家にいくところだったんだ」
……お。
金曜日だもんね。
泊まりかい?
なんて思いながら。
「そうなんだ。翔さんとは待ち合わせ?」
「してない。講義おわったらすぐ帰るから、先に帰っとけって言われてるんだ。このまま一緒に行ってもいい?」
「ふふ。いーよ」
「ありがと」
ペコリと頭を下げる潤くん。
翔さんが、大学生になって、潤くんがうちに泊まる頻度は少し増えた。
翔さんの受験という大きな山をこえ、遠慮する要因が減ったのもその一つ。
