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キラキラ

第28章 🌟🌟🌟🌠


Masaki



城の裏手には、俺の秘密の場所がある。

生い茂った木々が適度に姿を隠してくれるが、決して陰気な場所ではない。

花は咲き乱れ、芝は柔らかくて。
転がれば非常に寝心地がよいここは、昔から、母上に怒られたり、妹とケンカしたり、嫌なことがあったら足を運んで、自分をリセットしていた。

さらには、絶好のサボり場所でもあることから、家庭教師の目を盗んでは、ここで昼寝をしていたことも一度や二度ではない。

ちなみに、今日は、母上が見合いの話を持ちかけてくるかも、というネタをきき、早々とここに避難しているところである。


見合いだ?
冗談じゃないっての。


俺の心を占めているのはただ一人なんだ。



ああ……ミヤさん……今頃何してるかなあ……



脳裏をよぎるのは、かの国の俺の想い人の笑顔。


白い肌と華奢な体つきは、一見優男にもみえるが、穏やかな物腰といい、要所要所に垣間見る、目の鋭さといい。
付き人に求められる、スマートな他者との対応力は、抜群だった。


……どうして同じ国じゃないんだろ。
会いたい時に会えないなんて。
……遠すぎるよなあ……。


どこかでさえずる鳥の声に耳をすましながら、ブツブツと目を閉じていたら、ふいに誰かの気配を感じた。


ゆっくり目を開けると、そこには穏やかに頬笑む……よく知った顔。



「なんだ、おまえか」

「なんだ、とはなんですか。失礼な」



がっかりした俺の声音に、クスクスと微笑むのは俺の付き人のダイゴ。
ダイゴは穏やかに目を細め、俺の傍らに膝まずいた。


「……想い人じゃなくてすみません」

「ほんとだよ。これがミヤさんならどんなに良かったか」


口を尖らせる俺に、ダイゴはしょうがありませんね、というように肩をすくめる。
その意味深な顔に、なんだよ、とつっかかろうとしたタイミングで。


「お久しぶりです……マサキ様」


聞きたくて聞きたくてたまらなかった声が反対側から聞こえて、俺は、ガバッと起き上がった。

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