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キラキラ

第28章 🌟🌟🌟🌠


目の前には、はにかんだ顔をしたミヤさんが、ちょん、と座っていて、俺は、あわてて目をこすった。
今の今まで、記憶のなかでしか会えなかった張本人。


「……え、ミヤさん?!本物!?」

「……はい」


ふふ、と笑って頷くミヤさんは、以前出会った頃と変わらぬ優しい笑顔を浮かべていた。


「うわあ……夢みたいだ。お久しぶりです!」


思わず、手をのばしかけたら、その手がぺちり、とはたかれて、目の前に、ぬっと美女が現れた。

たれた目元が穏やかな印象をうける美しい女性だが、その口元は面白くなさそうに尖っている。


……あれ。
あなたもいたの?



「……わたくしもおります。マサキ王子」

「……サトコ姫……」



可憐な外見とは裏腹に、俺にとっちゃ、鉄壁のガードを見せる、ミヤさんの……恋人。

大の国の一人娘、サトコ様。

しとやかな方だと思っていたが、ことミヤさんのこととなると、素が出る面白い姫だ。

言葉づかいまで悪くなるのは、男兄弟のなかで育ったからであろう。


「……おい、ミヤ、お前は後ろに下がってろ。触られるぞ」



ほらね。



キツイ目で俺をにらみながら、ぼそぼそと低い声で牽制されるのも、超久しぶりで面白い。
俺は、負けないぞ。姫!


俺は、嬉しさで舞い上がりながら、


「どうされたんですか?」


と、鼻息荒くたずねると、ダイゴが、まあまあ、とたしなめて説明してくれた。


「お妃様が、大の国の特産品をお取り寄せなさったのですが、こちらに届けて下さる予定だった使いのものが、急に体調を崩され、ミヤさんにその役がまわってきたそうですよ」


「え……じゃあ、公式訪問じゃないの?」


「そういうことですね」


なら……なんで姫が?と、思った俺の考えがわかったのだろう。

サトコ様は仏頂面で、ぼそっと答えた。


「わたくしが、ミヤを一人でこの国に送り出すわけがないでしょう?」

「ふふっ……ですよねー」


理由なんかなんだっていい。

会えただけて俺はうれしいから。

サトコ様だって、本質は全然悪い方じゃないから、かまわないもんね。


「いつまでの滞在ですか?」


ぐいぐいと、ミヤさんに顔を寄せて聞いたら、


「……夕方には帰ります」

「いや、もう帰ります」


ミヤさんと、姫の声がかぶったことに、俺は大笑いした。





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