
キラキラ
第29章 バースト7
俺は、元気づけるように、かずの肩を優しくたたいた。
「でもさ、雅紀は、毎日部活だから、その子達に会うことはないよ」
「……ほんと?」
ホッとしたような、複雑な瞳に、胸が苦しくなった。
そうだよな。
そんなたくさんの女の子が、自分の恋人を追いかけてるなんて知ったら不安だよね。
……だって、俺もそうだもの。
翔の通う大学は当然のことながら共学。
俺の知らないところで、翔に近づく女子学生だっているかもしれない……というか、いるだろう。
それによって、やっぱり、女の子がいいって翔が思ったらどうしようって。
…うん。考える。
……でもさ。雅紀は大丈夫だよ、かず。
「……あいつがさ、いつもどんだけかずとの惚気話を俺にしてくると思ってんの」
「……え」
「こないだ着てた服が可愛かった、とか、タピオカをうまく飲めない様子が可愛かった、とか、高いところの本がとれなくて可愛かった、とか、それから……」
指折り数えて羅列してゆくと、かずは、真っ赤になりながら、もういい、と飛び付いて俺の手を遮った。
「どんな人間が寄ってきても関係ねーから、あいつ。かず一筋だよ」
「……うん」
「愛されてるって」
「……うん、ありがと」
かずは恥ずかしそうに笑った。
そこへ、パンケーキの焼ける甘くていい香りがフワフワ漂ってきて。
それにつられるようにお腹の虫がクルクルっと鳴った。
すげーいい匂い!
「お。うまそうな匂い。翔、俺にも一枚焼いてよ」
智さんが、振り返って、ソファーから声をあげた。
「そーゆーと思ったよ」
翔が、くるんとフライパンを返しながら、皿を四枚フワフワ浮かせて、カウンターに並べる。
「さもありなん、と既に準備中だよ。ついでにお茶にしようか。かず、コーヒー用意してくれる?」
「はーい」
「潤は、冷蔵庫のタッパーにフルーツ入ってるから、それだして」
「うん」
「智兄は生クリーム泡立てて」
「……なんで俺だけ力仕事?」
「ハンドミキサー使えばすぐだよ。……はい」
ポイポイと、智さんの手元にボールやら生クリームやらが飛んできた。
「どーやんだよ……こんなの」
ぶつぶつ言いながらも楽しそうな智さんに、手伝おうと歩み寄った。
