キラキラ
第29章 バースト7
HRがおわったと同時に、鞄をひっつかんで教室を飛び出した。
痛む体を無理矢理動かし、全力疾走に近い早さで校門をでて。
「……なにしてんの?」
ぜいぜいと肩で息をしながら、問えば、翔は柔らかに笑って本を閉じた。
「出待ち」
「……え?」
「お前の出待ち」
意味不明……。
ぽかんとしてると、本をトートバッグにしまいながら、翔がゆったりと体をおこした。
「またあの変なやつにつきまとわれたら困るだろ。時間がうまくあえばだけど、しばらく来ようと思ってな」
「……大丈夫だよ……」
「おまえの大丈夫は、あんまあてにならないからなぁ」
「ひど」
ヤッバイ……めちゃめちゃ嬉しいかも……。
にやけそうな顔を我慢していると、ドングリのような瞳をくるんと、瞬かせ、翔が俺の顔をのぞきこんできたから、思わず後ずさる。
待って。ここ、外……!
キスされるのかと思って、警戒したら、翔は声をたてて笑った。
「……お前寝てたろ」
「え?!」
「ヨダレ」
ちょいちょいと口元をさされて、慌てて手の甲でぬぐった。
「試験前だろー……寝てる場合かよ」
「だ……っ……だって……わかんねーもん」
「特訓してやるよ。かずも試験中だから、俺が全部見てやる。ほらこい」
「今日……家庭教師のバイトは」
「断った。俺が、一番最優先に勉強教えないといけない生徒が、ここにいるから」
「…………」
クスリと肩をすくめてから歩き出した翔の後を、あわてて追う。
ほんとに……ほんとになんて人だろう。
こんな人が俺の恋人だなんて……。
ドキドキしながら隣に並べば、翔は、ふっと微笑んで俺を振り返った。
俺も、にこりと笑い返した。
願わずにいられない。
……これからも、こうやって、歩いて行く翔の隣にいれますように。
いつまでも二人で笑っていれますように。
俺は、風に舞う翔の柔らかな髪の毛を、シャツのそでからみえる逞しい腕を、ふわりと香る彼の匂いを、全身で感じながら、そっと呟いた。
愛してる。
翔。
fin.