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キラキラ

第30章 hungry 2


Sho


大野さんとの約束の日。


部活からとんで帰ってきて、シャワーに飛び込んだ。
汗臭い体を、マッハで綺麗にする。

そのあと、洗面所で、ドライヤーとジェルで、あーでもないこーでもない、と髪の毛をセットしていたら、鏡越しに、妹のモモと目があった。

入り口にはりついて、好奇心いっぱいのキラキラした目でこちらをみつめている。


んだよ……うっとーしいな……


俺は、不機嫌な顔で振り返った。


「……なんだよ」


「おにい、デート?」


弾んだ声で、とんでもないことをいうから、俺はどきりとして、


「なっ……ちげーよ!」


必要以上の声で否定してしまった。

モモはにやりと笑って、

「へぇ……デートなんだ~……」

と、呟いた。


違うって!……と、さらに怒鳴りかえそうとして、ハッとする。

いかんいかん。
こいつのペースに巻き込まれてはいけない。

俺は咳払いをして、大真面目な顔を作った。


「部活の先輩の友達だっつの」


すると、モモは、なーんだ、つまんない、といってどっかに歩いていってしまった。

俺は、ホッとして、胸をなでおろす。

改めて自分の顔をみるが……なるほど、しまりがない。

持っている私服のなかでも、一番お気に入りのやつを着ているし、そりゃ、女の子とデートと思われても仕方ねーわな……。


苦笑いして、再びドライヤーのスイッチをいれた。


……まあ、俺にとっちゃデートなんだけどさ…。


昨日、おばあちゃんへのプレゼントを買いにつきあってほしい、と大野さんにお願いされて、一も二もなく了承した俺だ。

二人ででかけるなんて。
デート以外のなんだって話だよ。

鼻唄をうたいながら、窓辺におかれた時計に目を走らせた。


待ち合わせは、買い物予定の店のある駅前に2時。



……時計の針は1時25分。



「っ……やべっ」


俺は、ガシャンと、ドライヤーをほおりなげ、ブラシで前髪を整えると、洗面所を走り出た。


デート~?と、妹と同じように聞いてくる母親に、ちげーよっと怒鳴りかえし、財布とスマホをボディーバッグに突っ込んで、家を飛び出した。


早く……早く……

あなたに会いたい。

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