
キラキラ
第30章 hungry 2
流行る気持ちをおさえながら、最寄り駅から、ホームに入って来た電車に飛び乗った。
待ち合わせた場所は、大野さんの暮らす駅と俺の住む駅の、ちょうど真ん中あたりにある、大きな駅だ。
駅の入ったビルも大きく、周りはちょっとした繁華街になっているから、買い物にはうってつけ。
だけど、いろんな路線が乗り入れている駅だから、初めて訪れる人には、ややこしい場所だろう。
大野さんには、ほとんどの人が待ち合わせに利用する、大きなオブジェの前で、と指定した。
大野さんがおりる改札の真ん前だから、間違えないはず……。
「……あっ……」
そのオブジェの前で。
待ち合わせ時間10分前だというのに、既に到着している大野さんが見えた。
目のさめるような青のセーターに、黒のスキニー。
ショルダーバッグを斜めがけして、ちょんと立ってる姿が、なんとも可愛らしくて。
綺麗な人だと思っていたけど、制服姿から私服になったとたんに、雰囲気がかわり、急にドキドキしてきた。
やっばい……ありえないくらい可愛い!
所在なげに立ってる大野さんに、にやけそうになる顔を我慢しながら、俺は走りよった。
「すみません!遅くなりました!」
「あ、ううん。俺の方こそ早く着きすぎちゃったから……」
ちょっと不安そうな顔が、俺を見つけた瞬間ホッとしたような表情にかわったのを、見逃さない。
可愛い!
……嬉しくてなんもいえん!
必死で我慢したけど、きっと俺の顔はデレデレだろうな。
腕時計をみた大野さんは、全然遅れてないじゃん、と笑った。
俺は、数個ある駅の出口を見回しながら、大野さんに、本来の目的を改めて問う。
そうさ、そもそもの俺の役割は案内人なんだから。
「えっと……おばあちゃんへのプレゼント、何買うか決めてます?」
「……んとね。……手袋……とかどうかなって」
「ああ!いいんじゃないですか?」
「ほんと……?」
安心したような大野さんに、笑いかけ、俺はなるべく上品な品揃えがありそうなビルに、大野さんを案内することに決めた。
