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キラキラ

第30章 hungry 2


「あ……の……」

すごい、目力の女性だった。
くるんとした猫のような瞳で、じっと見つめられ、どぎまぎしてしまう。


……なにこれ、なにこれ。
驚かすつもりが、こっちがビックリさせられてますけど!?


動揺していると、横から大野さんが、助け船のように紹介してくれた。


「ヨシノちゃん、こないだの手袋、一緒に選んでくれた櫻井だよ」


すると、ヨシノちゃんは、ぱっと顔を輝かせ、その大きな口をほころばせた。


「うわぁ、ほんと。ありがとうね!さとちゃんと友達になってくれて!」

「……いや、ヨシノちゃん、こいつは、俺の友達の後輩で……」

「なによ」

「いや、だから」

「お友達でしょ?」

「……うん。友達」

「良かったねぇ、さとちゃん。こっちきてお友達できて」

「……うん、まあね」


……二人の掛け合いが面白い。
大野さんが、振り回されてて、なんだか新鮮だ。

すごくパワフルな女性だな、と思う。
この人が大野さんのおばあちゃんだなんて、誰も信じないだろう。

そりゃ、ばあちゃんなんて呼んだら叱られるわな。


俺は、クスクス笑った。


短く切り揃えられたショートカットの髪も、その活発さを象徴するかのよう。
耳に光るピアスや、上品な化粧からも、とてもとても50代には見えなかった。


「櫻井くんさぁ、ほんっと可愛いから、サービスしちゃう。さっき、マフィン焼いたから食べていってね。ほら座って座って」

「あ……ありがとうございます」


促されるままに、カウンターに腰かけた。

大野さんがその隣に座り、眉を下げて俺を見た。




「……なんか、逆にびっくりさせてごめん」

「すっごく綺麗なおばあちゃんですね」


カウンターの中で鼻唄を歌いながら、マフィンを皿に乗せてるヨシノちゃんをみて、俺は、大野さんに笑いかけた。

大野さんは、うん、と肩をすくめた。


「商売がら、若々しくなってゆくんだろうね。ヨシノちゃんって呼んだら学校では通じないから、外ではばあちゃんって呼んでるけど。……似合わないでしょ」

「はい……ヨシノさん呼びがピッタリ」


大野さんと顔をつきあわせて、こそこそしゃべる事が楽しい。

なんだか、素の大野さんを、また見れた気がする。

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