キラキラ
第30章 hungry 2
「……しかし、最近あいつもよく来るなぁ…」
あわてふためく俺とは対照的に、松潤はのんびりと独り言を呟いて、かけてた眼鏡を外し、レンズを光にかざす。
プリプリ怒りながらも、その呟きは耳に入り、少しだけ我にかえった。
そーいや、こないだ、智とキスしたときに邪魔したのもあいつだったな……。
なんだよ。一年のくせに保健室の常習犯かよ?
俺と同じようなサボりかたをしてると思ってたら、
「二宮のやつ、この頃よく熱だすんだよなぁ………」
「…………」
マジか。
松潤の言葉に、愕然とする。
マジで具合悪いパターンじゃねぇか。
……サボりにきた身としては、肩身が狭い。
「……つかまえて連れてくる」
学ランに腕を通して、ベッドをおりた。
ついでに、誤解も解いておこう。
面倒なことになる前に。
手ぐしで、髪の毛を整えながら、ふと、松潤を見る。
スラリとした体躯に白衣が似合う。
白い肌に、整った鼻梁。
意志の強そうな眉に、大きな瞳。
まあ……性格はともかく、男前なのは認める。
あんなこというってことは。
…………男。経験あるんだろうか。
「なあ」
「ん?」
「松潤って……恋人いるの?」
「……ああ」
「女?」
「……どっちだと思う?」
ニヤリと笑った笑みが、ぞくりとするほど妖艶で……俺は、コクリと息をのんだ。
逃げるようにでてきた保健室から、一年の教室に向かって歩き出す。
松潤の恋人、あれ絶対男だ……!
あの色気や、物知りなところに妙に納得しながら、そういえば、二宮と雅紀の仲も突っ込もうと思ってたんだ、と思いだし。
改めて、智と自分の仲をも思う。
俺らには、今はキスで充分。
心が通じあっただけで満足だもんな。
そのうえでひとつひとつ、ゆっくり仲を深めていけたらいいな……と思う。
つらつらと考えていたら、緩やかに微笑む智の顔が急に見たくなった。
部活帰りに、ヨシノさんところに行こう、と決めてLINEを立ち上げた。
…………会いたい。
言葉に想いをのせて。
好きだよ、と、青空に飛ばした。
fin.