影に抱かれて
第10章 蜜事
あの祭壇はまだあるのだろうか?
庭の花々で飾られた祭壇と、その前で聖書の読み聞かせをしているジュールと自分の姿がふと浮かんだ。
開け放たれた木戸から差し込む夏の日差しに透けるジュールの柔らかい髪をうっとりと見つめながら、その声に耳を傾けて……
それはとても美しい情景だった。寄宿生活の中で、あの頃に戻りたいと何度も何度も思い浮かべた懐かしいあの日々……
今は15歳になったはずのジュールは、どんなに立派な少年に成長しているだろう。これから会えるかもしれないという、淡い喜びがリュヌを包んでいた。
内部に入ると、外には漏れていなかった微かな音が聞こえて来た。
ガチャ……ガチャン……
鉄製の何かが立てている音だ。
以前の、子供だった頃の二人なら、「ジュール、僕だよ!」と叫びながら、この階段を駆け上がっただろう。
しかし今は、ジュールの状況が分からない。自分が死んでいると思っているままだということも十分に考えられる。
そして、この上にジュールがいるとほぼ確信してはいたが、実際に行ってみないとそれは分からなかった。
庭の花々で飾られた祭壇と、その前で聖書の読み聞かせをしているジュールと自分の姿がふと浮かんだ。
開け放たれた木戸から差し込む夏の日差しに透けるジュールの柔らかい髪をうっとりと見つめながら、その声に耳を傾けて……
それはとても美しい情景だった。寄宿生活の中で、あの頃に戻りたいと何度も何度も思い浮かべた懐かしいあの日々……
今は15歳になったはずのジュールは、どんなに立派な少年に成長しているだろう。これから会えるかもしれないという、淡い喜びがリュヌを包んでいた。
内部に入ると、外には漏れていなかった微かな音が聞こえて来た。
ガチャ……ガチャン……
鉄製の何かが立てている音だ。
以前の、子供だった頃の二人なら、「ジュール、僕だよ!」と叫びながら、この階段を駆け上がっただろう。
しかし今は、ジュールの状況が分からない。自分が死んでいると思っているままだということも十分に考えられる。
そして、この上にジュールがいるとほぼ確信してはいたが、実際に行ってみないとそれは分からなかった。