影に抱かれて
第13章 再生
驚いたリュヌがジュールを見ると、その顔は凍り付き、怒りとも驚きともつかない表情が浮かんでいる。その隣ではモンフィール候が、満足げな表情で周囲からの祝いの言葉に耳を傾けていた。
以前パトリシアがジュールを見掛けたときに、一目惚れに近い気持ちを抱いた話なども聞こえて来て……これは本当の話なのだと、リュヌは頭が真っ白になった。
ジュールは……やはり何の表情も浮べていない。でも、知らなかったに違いない。
自分に内緒でそんなことを決める筈がない……。そうは思っても、当主であり当事者であるジュールの知らないところで縁談の話など進むのだろうか……
「まあ素敵……」
「おお、素晴らしいお話ですなあ」
不安になるリュヌを他所に、皆、口々に喜び合っているのが聞こえる。しかしその空気を壊すかのように、大広間にはジュールの低く押し殺したような……しかし、冷静な声が響いていた。
「僕は……パトリシア様には相応しくありませんよ。だって、僕には恋人がいるんです。ほら、そこに……」
リュヌの立つ方向を指差そうとするジュールの腕の前に夫人が慌てて割り込んだ。
「まあ、ジュール……! お黙りなさいっ……」
以前パトリシアがジュールを見掛けたときに、一目惚れに近い気持ちを抱いた話なども聞こえて来て……これは本当の話なのだと、リュヌは頭が真っ白になった。
ジュールは……やはり何の表情も浮べていない。でも、知らなかったに違いない。
自分に内緒でそんなことを決める筈がない……。そうは思っても、当主であり当事者であるジュールの知らないところで縁談の話など進むのだろうか……
「まあ素敵……」
「おお、素晴らしいお話ですなあ」
不安になるリュヌを他所に、皆、口々に喜び合っているのが聞こえる。しかしその空気を壊すかのように、大広間にはジュールの低く押し殺したような……しかし、冷静な声が響いていた。
「僕は……パトリシア様には相応しくありませんよ。だって、僕には恋人がいるんです。ほら、そこに……」
リュヌの立つ方向を指差そうとするジュールの腕の前に夫人が慌てて割り込んだ。
「まあ、ジュール……! お黙りなさいっ……」