影に抱かれて
第2章 月と太陽
「リュヌー! リュヌ! 早くっ!」
庭の垣根をぴょんと飛び越え、脇目も振らずに駆けて来たかと思うと、あっという間にリュヌの腕を取って走り去ろうとする。
しかし、いくら子供でもリュヌは使用人だ。自分の仕事場に主を残して遊びに行くことなどできるはずがない。
「待って、ジュール! し、仕事中だよ!」
そこで初めてジュールは自分の父親の方を見た。
「……父上、リュヌを連れて行ってもいいでしょう? 鳥の巣を見つけたんだ」
「鳥の巣……本当にっ?! あ……」
思わず大きな声を上げてから、リユヌは慌てて口を押えた。植物はもちろん、動物の世話などもリュヌが好むことだった。
「いいよ。行きなさい」
「でも、旦那様……」
「なあに、水やりはあとからでもいいだろう。それに剪定は私が喜んでやらせてもらうよ。リュヌがよく手入れしてあるから、物足りないぐらいだけどなあ」
主からの許可を得て急いで鞄を肩に掛けると、その場で深々と一礼してからリュヌはジュールの後に続く。その姿をにこやかに見送る伯爵だったが、二人が見えなくなると、ジャンと少し困ったように笑い合っていた。
庭の垣根をぴょんと飛び越え、脇目も振らずに駆けて来たかと思うと、あっという間にリュヌの腕を取って走り去ろうとする。
しかし、いくら子供でもリュヌは使用人だ。自分の仕事場に主を残して遊びに行くことなどできるはずがない。
「待って、ジュール! し、仕事中だよ!」
そこで初めてジュールは自分の父親の方を見た。
「……父上、リュヌを連れて行ってもいいでしょう? 鳥の巣を見つけたんだ」
「鳥の巣……本当にっ?! あ……」
思わず大きな声を上げてから、リユヌは慌てて口を押えた。植物はもちろん、動物の世話などもリュヌが好むことだった。
「いいよ。行きなさい」
「でも、旦那様……」
「なあに、水やりはあとからでもいいだろう。それに剪定は私が喜んでやらせてもらうよ。リュヌがよく手入れしてあるから、物足りないぐらいだけどなあ」
主からの許可を得て急いで鞄を肩に掛けると、その場で深々と一礼してからリュヌはジュールの後に続く。その姿をにこやかに見送る伯爵だったが、二人が見えなくなると、ジャンと少し困ったように笑い合っていた。