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影に抱かれて

第2章 月と太陽

雑木林の木漏れ日の中にジュールはどんどん入って行く。そして空気がひんやりとし、木々の匂いが強くなってくると、そこは人の気配は全く感じられなかった。

ジュールはそこでやっと立ち止まり、一本の木に寄り掛かるようにして振り向いた。その顔には、他の人間には見せない悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。

そんなジュールを、リュヌは見上げるようにして尋ねた。二人の身長はもう頭一つ以上も違ってきているのだ。

「ねえジュール、鳥の巣はどこ?」

「ああ、嘘だよ。リュヌと二人になりたかっただけだから」

と悪びれる様子も無く言うジュールはますます自由奔放になっていて、嘘をついて大人を煙に巻くことなどしょっちゅうだった。

「えっ、そうなの? じゃあ、戻らないと……」

そう言って踵を返すリュヌの腕をジュールが掴む。

「そんなことしたら、父上に僕が嘘をついたってばれてしまうだろう? リュヌは……僕が叱られてもいいの? リュヌのために嘘をついたのに」

はたから見れば理不尽な会話だったが、そう言われたリュヌ本人は、ジュールに迷惑を掛けたらいけない……と、そう思っていた。

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