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影に抱かれて

第4章 雲に隠れて

その頃リュヌは、伯爵家の広い廊下を歩いていた。

いつかフランクール家に恩返しがしたい……そしてその為の知識を身に付けたい。そのためには、このように恵まれた話を断るなどやはり考えられない……

そんなことを思いながら曲がり角に差し掛かったところで、リュヌは突然、廊下の隅に引き込まれていた。

「あっ……! 誰っ」

「シーッ……」

リュヌの口もとを大きな掌が包み込む。
……ジュールが待ち伏せしていたのだ。

驚くリュヌを引きずるようにして移動させるジュール。
そしてビロードの、ボリュームのあるカーテンの影に二人の身体がすっかり隠れたところで、ジュールはその手を離した。

「まさかリュヌ、承諾していないよね?」

「……少し考えるようにと言って下さったけど……ねえ、ジュールは賛成してくれないの?」

「する訳ないじゃないか!」

リュヌには理解できなかった。

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