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影に抱かれて

第4章 雲に隠れて

「僕にとって、君がどんなに大切な存在かわかるかい? 実の両親なんかよりもずっと……ずっと身近に感じているんだ」

どうして血を分けた親よりも自分などを大切に思ってくれるのだろう……もしかしたら身寄りのない自分を不憫に思ってくれているのかもしれない。

そう推測はしても、驚く気持ちは抑えられなかった。そして驚きと同時に、大きな喜びも湧き上がる。

身寄りのない自分を、肉親よりも身近に感じるという言葉……それはリュヌにとって何よりも嬉しい言葉だったのだ。

けれど、ジュールの声は聞いたことが無いほど震えている。もしかしたら泣いているのかもしれない……そんな頼りないジュールを見たのは初めてで、リュヌは途方に暮れた。

どうしても、今回与えられた学びの機会を手放す気にはなれなかったのだ。

ジュールを想えばこその決断なのに……どうすれば分かってもらえるのだろう?

すると、ジュールの指がリュヌのズボンのボタンに掛かった。

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