影に抱かれて
第5章 甘く、苦い……
暫しの沈黙……伯爵は何かを考え込んでいる様子だった。そしてしばらくして夫人の身体を離した伯爵は、直立不動で沙汰を待つリュヌの前に立つ。
その目は、深い悲しみに沈んでいた。
「どういういきさつかは分からない。しかし……お前には失望したよ。このままジュールの側に置いておくことはできない……」
あの行為が世間的にも、そしてリュヌが信じる神からも認められないものだということは、もうはっきりしていた。
きっと屋敷を追い出され、また、孤児になるのだ……
そんな考えがリュヌの頭をよぎったが、それよりも、親切な伯爵夫妻を失望させてしまったという事実にリュヌは打ちのめされていた。
「明日にでも学校に行きなさい。あちらへは今夜中に早馬を出しておくから」
「え……」
リュヌは耳を疑った。
本来なら無一文で追い出され、たとえ飢え死にしても仕方のないことをしたのだ。なのに、学校へ……。
もしかすると、そもそも学校へ行かせてもらえるという話も、自分をジュールから遠ざける為だったのかもしれない……そんな寂しい思いが心に浮かぶ。
それでも、リュヌは有難さに涙が出た。
その目は、深い悲しみに沈んでいた。
「どういういきさつかは分からない。しかし……お前には失望したよ。このままジュールの側に置いておくことはできない……」
あの行為が世間的にも、そしてリュヌが信じる神からも認められないものだということは、もうはっきりしていた。
きっと屋敷を追い出され、また、孤児になるのだ……
そんな考えがリュヌの頭をよぎったが、それよりも、親切な伯爵夫妻を失望させてしまったという事実にリュヌは打ちのめされていた。
「明日にでも学校に行きなさい。あちらへは今夜中に早馬を出しておくから」
「え……」
リュヌは耳を疑った。
本来なら無一文で追い出され、たとえ飢え死にしても仕方のないことをしたのだ。なのに、学校へ……。
もしかすると、そもそも学校へ行かせてもらえるという話も、自分をジュールから遠ざける為だったのかもしれない……そんな寂しい思いが心に浮かぶ。
それでも、リュヌは有難さに涙が出た。