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影に抱かれて

第5章 甘く、苦い……

夫人とジャン、そして遅れたリュヌが三人で伯爵の私室に戻ると、夫人はカウチに身を預けて叫びだした。

「リュヌが……リュヌがっ! ジュールを無理やり……ああ、なんてこと……!」

夫人は興奮が収まらず、肩で息をしている。

ジャンが取り成そうにも、二人がしていた行為はあまりにも重すぎた。そしていつもは楽観的な伯爵も、言葉を失っていた。

しかし……

「この子には……淫売の血が流れているのよ!」

と、夫人が汚い言葉で罵ると、それまで黙っていた伯爵が珍しく夫人を叱責する。

「やめなさい、リュヌには罪のないことだ……!」

淫売とはなんだろう……?

リュヌには分からなかったが、ここで質問などできる訳がない。

伯爵の言葉に、今まで涙も出ない状態だった夫人がしくしくと泣きだすと、伯爵はその身体を抱きしめた。

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