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影に抱かれて

第6章 ケージ・エピネ

馬車の座席に身体を戻し、リュヌは泣いていた。

あんなに取り乱したジュールを見るのは初めてだった。このような形で置き去りにされる方はどんな気持ちなのだろう……

ジュールとの距離がどんどん離れて行く。リュヌは今まさに〝身を切られる〟ような想いに包まれていた。

伯爵が初めに入学を提案してくれた時の、あの胸の高鳴りが嘘のようだ。

こんな形ではなく、皆に後押しされての出立だったとしたら……ジュールと離れる寂しさはもちろんあっただろうが、これ程では無かっただろうに。

どこまでも続くのどかな田園風景。山々が美しいフランクール領の景色……それも暫く経つと、切り開かれていない土地が増え、森が深くなってくる。

どこまで来たのだろう……もうフランクール領を離れてしまったのかもしれなかったし、そうでなくてもそれはもう時間の問題だろうとリュヌは思った。

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