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影に抱かれて

第6章 ケージ・エピネ

暗くしたひとつのランタンに顔を寄せて、囁くように行われる自己紹介。

それは時間に厳しい学園で生活する上でのドゥルールの配慮に他ならなかったが、息も掛かりそうなその距離はリュヌを少し気恥ずかしいような気分にさせた。

しかしケージ・エピネという言葉は穏やかではなかった。〝いばらの檻〟とは……どういうことだろう?

何も言えず、ゴクリと息を飲むリュヌの頬にドゥルールが触れる。

「いやだなあ、リュヌ。そんな顔しないでよ……。外の人間が言うほどでもないから安心して。それに僕が付いていてあげるから大丈夫だよ。なにがあっても助けてあげるから」

まるでジュールが言っているかのような台詞と仕草……

「あ、ありがとう、ドゥルール。僕はリュヌ。年はもうすぐ十一歳で……」

顔を赤らめたリュヌが急いで身体を離し、握手をしようと手を差し出すと……ドゥルールはプッと吹きだした。

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