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影に抱かれて

第7章 花の蜜

ジュールはどうなのだろう。

聖書の内容について知らなかった訳などないとは思う。では知っていてあんなことをしたのか……リュヌには分からなかった。

とにかく、もう二度とあのようなことをしてはならないのだ。今からでも神に赦しを乞うのだ。神はやり直しがきくと仰ってくださっているのだから。

『私を清めてください、私は清くなるでしょう。私を洗ってください、私は雪よりも白くなるでしょう。神よ、私の不義をことごとく拭い去ってください……』

リュヌは寝る前に行うその日最後の祈りの際に、毎日そう唱えていたが、それでもジュールの存在やジュールと過ごした時間だけはどうしても否定することができない。

神に赦しを乞う、その唇で……ジュールに会いたいと、つい呟いてしまいそうになる。そんな自分の心がリュヌは自分でも分からなくなってしまうのだった。

板挟みになり苦しむリュヌの毎日を、いくらか明るいものにしてくれていたのはドゥルーの存在だ。初めの言葉通り、ドゥルーはリュヌにとても親切だったのだ。

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