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影に抱かれて

第8章 心のままに

「……僕は密偵なんだ」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。

「み、密偵……?」

「フランクール夫人に雇われたんだ……ジュール様と連絡を取ったりしないようにって」

夫人がドゥルーを雇う?
さっぱり意味が分からない……

「そんな、だって……僕はここに急に来ることになったのに……」

ドゥルーはリュヌにとってすでに大切な友達だったが、編入という形で突然学園に来ることになった経緯や、ジュールのことはその存在すらも一度も話したことが無かった。

……ジュールとのことはどこまで知っているのだろう。それに、親友だと思っていたのに、自分に近付いたのは全て計画的だったのか……

「僕は夫人の遠縁にあたるんだ……と言っても、リュヌが来る一ヶ月ぐらい前に知ったんだけどね。リュヌをここに入れる計画を立てた時に僕の存在を知って……使えると思ったらしい。本当はもっと先に来るって聞いていたのに、突然やって来るから驚いたよ……」

「奥様の……。じゃあ、ドゥルーも本当はお金持ちなの? 」

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