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第2章 Warp A×N
A side
『家の住所変わってないよね?
今日の夜、家に行ってもいい?』
アイツからの突然のメールを読んだのは、
会社での昼休み。
「え…?」
皆が昼飯を食べるために、
どんどんオフィスを出ていく。
「なに食べる?」とか、
そんな会話ばかりが聞こえてくる。
慌ただしいオフィスの真ん中。
携帯を凝視して持ったまま
デスクに座ったままの俺。
差出人は…和也から。
件名なんてない。
本文だけのメール。
普通の友達なら、パッと読んで
予定を確認して、
「うん。全然大丈夫だよ!」って
サラッと書いて終わり。
それだけですむ。
でも、和也からのメールときたら
わけが違う。
ことの重大さが違うわけだ。
「やべ、部屋片付けてないわ。」
「給料日前でお金無いし、
大したもてなしが出来ないし…。」
とか、そういうレベルではないんだ。
和也は、俺の『元カレ』ってヤツだから。
和也とは、3年前に別れた
俺の元恋人なんだ。
和也とは喧嘩別れをして、
それから1度も連絡を取っていなかった。
それ以上にまずいのは、
俺がまだ和也のことを好きだっていうこと。