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第1章 リッツ N×A




N side


同じ会社にいた恋人は、
もういない。

隣のデスクだった恋人も、
前のデスクにいた仲間も、みんないない。


転勤してから、今日で1年になる。

この寂しさにはどうにも慣れない。


恋人とはいわゆる遠距離恋愛。

そろそろ泣いてる頃なんじゃないかと
思ってさ…。


「次の休みには会いに行くから。」


何度も何度も恋人に言い続けてきた。

その度に、

「ほんと!?」って、電話越しにでも
分かるくらい嬉しそうで。


だけど、1度も行けたことはない。

俺の仕事がことごとく入ってくるから。

行けなくなったって電話する時ほど、
胸が痛くなる時はない。


「大丈夫だよ。」

「仕事だもん。」

「俺は大丈夫だから。」

「気にしないで。頑張って。」

そんなことばっかり言わせて。


雅紀は1度も、
「淋しい」なんて言わなかった。

ただ頑張れって。


大丈夫な訳ないよ。
俺が大丈夫じゃないんだから。


だからさ…。


「会いに行くから。」


サプライズ作戦を決行。

雅紀には伝えずに行くことにした。

もしダメでも、がっかりなんて
させたくないから。


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