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第6章 記念日には A×N
これまでも、相葉は記念日の度に
恋人の和こと二宮に何らかの
プレゼントを渡していた。
ある時は、マフラーを。
またある時は、Tシャツを。
ただ十年目ともなると贈るものに
一段と気を遣い、品に迷うのも致し方ない
ことではあるが、相葉の優柔不断な性格が
さらにそれに拍車をかけている。
相葉の携帯が鳴る。
一件のメールを受信したらしい。
「…和。」
今はもう昼の一時過ぎ。
仕事に行っていると思っている
二宮からのメールだった。
『仕事頑張って。ご飯作って待ってるから。』
いつもと変わらない時間、
いつもと変わらない文面に
相葉は思わず顔が緩んでしまっている。
二宮のメールは、いつも一時過ぎだ。
これには彼なりの理由があるのだ。
相葉の勤める会社の昼休みは一時で終わる。
その時間を待って、その時間にメールを送る。
どうも、昼休みにメールを見られるのは
恥ずかしいらしい。
素直な相葉のことだ。
すぐに顔がさっきのように緩んで、
会社でからかわれるのだろうか。
それを考えると、どうしても二宮は
昼休みにはメールを送れないのだ。
仕事が終わってからでないと見れない時間に
わざと送っている。
こう考えてみれば、可愛いものである。