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第6章 記念日には A×N
そして、その後に気が付く。
ここは自分の来るべき場所ではなかったと。
明るく眩しい店内で、相葉は
完全に自分は浮いてしまっていると感じた。
冴えない自分の来る場所ではないと。
ジュエリーショップと聞けば、
もう少し厳格というか、硬いイメージが
相葉の中にはあった。
しかし、このお店はそこまでの
空気は流れていない。
どこか優しい雰囲気があるのは、
照明の光が優しいからであろう。
店内のこの眩しさは、ライトのような
人工的なものではなく、宝石の持つ
強い輝きからであった。
相葉が自分の魅力に気が付いていないのも
一つの問題ではあるが、相葉にとって
今はそれどころではないらしい。
入ったあとから途端に出てくる羞恥。
だけれども、そんなことを感じても
後の祭りである。
出ようかと試みようとはするのだが、
宝石に惹かれている自分もいるらしい。
また、ジッと見入ってしまう。
宝石の眩しい輝きに、眩暈がしそうだ。
値札を見れば、さらに眩暈がひどくなった。
「やっぱりダメだ。」
いくら何でも予算オーバー。
あいにく相葉には、持ち合わせも
クレジットカードもなかった。
もう出ようと相葉が来た道を
辿ろうとしていた時、
「いらっしゃいませ。」
店員の声がした。
相葉は、そこで絶望にも似た
気持ちを感じたのであった。
To be continued...