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第7章 背伸び A×N





俺って、ずるいヤツなんだよ。


…ホントはね。

いつも、ギリギリの時間に相葉さんを
起こしてる。

食パンを咥えてもらうために、
毎日朝はパンにしてる。


こうすれば、相葉さんは
決まって俺にネクタイを結ばせるから。

奥さんになった気分を、
少しでもいいから味わいたくて。


ごめんね?相葉さん。
いつもギリギリに起こしちゃって。

ごめんね?元々朝はお米派だったのに、
無理やりパン派にちゃって。



「ギリギリ間に合う!」
「お弁当持った?」
「あ、持ってない。」


ドタバタと音を鳴らして、
ダイニングのお弁当箱を取りに行ってる。

毎朝同じことして、飽きないのかな。
毎朝、お弁当箱忘れるよね?


「もう忘れ物は?」
「ない!大丈夫!」
「じゃあ気をつけてね。」
「うん!行ってくる!」


あ…。
玄関のドアが閉まる。


「行ってきますのキス…。」


いつものヤツがなかったな…。
仕方ないか、今日は特別ギリギリだったし。


「俺もそろそろ店に行かなきゃ。」


リビングへと戻ろうかと思った時、
玄関のドアの外から、物凄い音がする。

すぐに分かった。

相葉さんだって。


「かず!忘れ物!」

キラッキラの笑顔で、
カバンを放り投げて俺に手を伸ばす。


その腕に飛び込んで、俺は背伸びをする。

じんと心まで暖かくなるキス。


背伸びしなきゃ届かないけど、
背伸びをすれば届くんだから。


ゼロ距離も、下から見上げる相葉さんも

ぜーんぶ俺のもの…ね?



-end-

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