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第7章 背伸び A×N





「慌ててるからでしょ?」
「元々苦手なんだもん…。」


うるうるした瞳で俺を見てる。

もう30も超えてんのに…って思うのは
ほんの一瞬で、キュンとくる自分がいる。

それに弱いんだって、俺。


ネクタイを結ぶのは好きじゃない。

まして、相葉さんのネクタイを
結ぶのなんて、もっと好きじゃない。


でも、どうしてもっていうから
ネクタイを結ぶのを手伝ってやる。

何せ7センチも差があるもんだから、
背伸びは必須。

背伸びをして、目一杯腕を伸ばして
やっとこさネクタイを結ぶ。


この時の相葉さんの顔は、決まって笑顔だ。

にこにこしながら、俺がネクタイを
結ぶのを見てる。
食パンをもぐもぐしながら見てる。


「…食べかす、落とさないでよ?」


恥ずかしくて、俺なりの照れ隠し。

いつもネクタイを結ぶ作業には慣れない。


だって、俺が背伸びをすれば
相葉さんとの目線は同じになって。
必然的に、目が合うようになって…。

ゼロ距離になる。

ネクタイを結ぶのは苦手。
でも相葉さんとのこの距離は好きだ。


だけどやっぱり照れくさいから。

食パンをもぐもぐしててくれた方がいい。

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