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第1章 リッツ N×A
感動の再会だねって、
潤くんはリビングへと消えていく。
まだ理解出来ていないらしい雅紀は、
じーっと固まったまま。
「俺にはおかえりって言ってくれないの?」
照れ隠しに意地悪なことを言ってしまう。
「え、だって…。何で…。」
何でここにいるのって言いたいんだと思う。
だけど困惑している中じゃ
そんな簡単な言葉さえも出来ないらしい。
「会いに来たよ。」
笑顔で迎えてくれると思ってた。
でもその言葉を聞いた途端、
雅紀の瞳から零れ落ちてくる涙。
今度は俺が困惑する番。
「え、ちょ、泣くの?」
「だって、だってぇ…っ。」
「あー、ほら。」
反射的に伸ばした手に、
反射的に雅紀が飛び込んでくる。
俺たちの恋人としての長さを
もの語るかのようだ。
「ごめんな、泣かせて。」
「違、嬉しくて…。」
「うん、知ってる。」
「…うぅ、和の意地悪…!」
意地悪って言うクセに、
さっきよりも強い力で抱きしめてくる。
1年ぶりの雅紀の香り。
しっくりくる感触。
抱きしめた時の温度。
少し左上から聞こえてくる吐息。
俺の肩に零れてくる温かい涙。
ちょっと掠れた声で呼ぶ俺の名前。
俺の帰ってくる場所はいつだってここだ。
初めて目が合ったあの時から。
付き合おうって言ったあの時から。