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第10章 wait a minutes,please? N×A





A side


インターホンを鳴らせば、
エプロンをつけたニノが迎えてくれた。

そんな姿にまたキュンとする。

だって新婚さんみたいじゃない?


…なーんて、淡い期待をしてる自分が
嫌になる。

期待するな、期待するなって
何度も唱えておいた。


だって傷つきたくないから…。
我ながら子供だって分かってるけど。


「いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
「寒かったでしょ?コタツ入れといた。」
「ほんとに?ありがとう。」
「もうちょっとで出来るから、
適当に座っててね。」


パタパタとスリッパを鳴らして、
キッチンに駆け寄ってく姿に
またキュンとくる。


ご飯まで作ってくれたの?俺のために?


期待するなってあれだけ唱えても、
やっぱり期待してしまう。

もしかしたら…って。


「出来たから持っていくね。」
「あ、手伝うよ。」
「ほんと?ありがとう。」


ミトンをつけて、オーブンから
何か取り出してる。

あ、パイだ…。


「美味しそう…。」
「味はあんまり保証出来ないよ?」
「これ作るの、大変だったでしょ?」
「そうでもないよ。」


嘘だよ、そんなの。

だってキッチンにまだ、格闘したあとが
残ってるもん。


…ねぇ、ほんとに…。

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