
ビタミン剤
第7章 人魚のナミダ
扉が閉まると
途端に静寂が部屋の中を支配して
翔さんと別れてからの様々なことに
思いを巡らせていた。
気付かなかった翔さんの優しさ
心配り、思いやり。
なのに自分のしてきた軽率過ぎた行動。
嵐の松潤に喰いつく人間は腐るほどいてた。
だけど、ただの松本潤にずっと
寄り添ってくれてたのは
中学生時代の俺には
翔さんは兄貴みたいな頼れる存在で
キラキラしてカッコよくて。
俺もあんな風になりたいって
めっちゃ背伸びしたりしてたんだ。
翔さんはいっつも
何歩も先にいる存在だったけど
ちゃんと振り返って
俺が離れそうになったりしたら
ぎゅっと手を繋いでくれてた。
大学入学、卒業。
ニュースキャスターをしたいって
切り出した時、
俺は翔さんにいらいらしてた。
嵐として、デビューしてから
ようやくおなじくらいの立ち位置に
並べたって思ってたのに。
そう感じても
翔さんはまた違う方向性を見つけて
さっさと歩きだすから。
嵐の為に様々なものを見聞して
視野を広げて、柔軟に吸収していっていた。
