
ビタミン剤
第8章 食物連鎖
帰りの車中
助手席には今晩の夕食の買い出しの
荷物を持ってくれてる智くん。
「翔ちゃん昼間はありがとね。
おいら泣いちゃうわ、寝ちゃうわ
なんか、ホントダメダメだぁ」
はにかむ笑顔に
思わず胸がきゅんとなる。
ハンドル握る手を片方放して
智くんの手の上に重ねてあげた。
「おいらやっぱり、リーダーに
相応しくないよ、翔ちゃんのほうが
よっぽどリーダーっぽいもん」
さらっと吐き出し台詞に自虐さは
ものは混じってないけど、智くんには
いつも笑っててほしいから、話題を
変えてあげることにした。
「智くんあのね、俺ずっと前から
智くんに似合うなぁって思ってた
イメージの花があるんだよね」
「なに、なに、また木に咲く花?」
「ううん、俺がガキの頃毎年おふくろに
摘んであげてた花なんだけどさ。」
「へえ、翔ちゃんもそんな
かわいいことしてたんだぁ。」
ぼんやり色褪せてる幼い頃の
想い出の中
でも、その花の色はいつでも
あざやかな空の色で思いだせる。
