
ビタミン剤
第4章 こんなの、はじめて
「雅紀こっちにおいで。」
差し出される右手で有無を
言わせずに俺を
引き寄せてきてキスされる。
昨日から、今朝もだけど
こんな翔ちゃんは初めて。
「前にさ、
雅紀が俺のことおもてなしして
くれたよね。
俺、あれめっちゃ嬉しくてさ。
雅紀と2人でデートした
夏の千葉の初めて尽くし。
いつか、
雅紀に俺の初めて尽くしを
してあげたいなぁって、
思ってたんだ、どう?雅紀。」
「こんなの?」
「…初めて…」
「番組最後で落とし穴に落ちた時、
俺ヤバいなぁって思ったの。
雅紀も直ぐに穴に降りてきて
くれたよね。
2人で見上げた花火
今でもずっと覚えてる。
俺あの瞬間に
雅紀が好きだって自覚したから。」
「翔ちゃん…。」
あのときはホントの片想いだった。
翔ちゃんとの妄想デートのプランが
勝手に膨らんで膨らんで
スタッフさんも悪ノリしてくれて
俺もあれが一番大切な思い出。
それを、翔ちゃんも
俺と同じ気持ちでいてくれてたんだ。
「ゆっくり温まってね。
あんまり一緒だと、また雅紀を
襲いたくなるし。
ツルツル雅紀も
めっちゃかわいいからね。」
おでこにチュッとしてから
ウィンクする翔ちゃんが
やたら格好いいから見惚れてた。
「あ、そうだ
朝飯トマトかバナナどっちが
いい?」
「………」
うっかり返事して昨日みたいに
なっちゃうから
簡単には答えない。
「まーさーきー
もしかして、俺のバナナが
たべたいって思ってくれてるとか?」
「バカバカ、翔ちゃんのバカ
朝飯はフルグラに
決まってますよーだ。」
「あははは
オッケーオッケー!」
