
ビタミン剤
第25章 a mole tunnel
「俺の部屋番号を教えてほしけりゃ
いいつけ通りに賢くたちまわれよ。
ほら、潤が来たぞ。」
来週また逢えるんだ。
またすぐ翔くんに抱いて貰える。
込み上げる喜びを奥底まで沈めるようにして
表情を親友にいつも見せるものにかえていく。
フロントガラス越しに見えた潤の姿は
いかにも芸能人オーラを全身から放ってて
スタイリッシュな恰好をしながら
こっちに歩いてきた。
「斗真お疲れ。
あれ?やっぱ、翔くん…だよね?」
「そ、さっき局でばったり会ったんだ
潤と飲みに行くって話したら
送ってくれるって言うから、甘えちゃった」
ぺろりと舌を出して
屈託なく微笑む表情をつくっておく。
「よ、お疲れさん潤。じゃあな斗真。」
「え、もう帰っちゃうの?」
引き止める潤の小さな声は
すこし戸惑ってるようなもの。
「潤からもさそってよぉ
さっきから翔くんも一緒に飲もうって
さそってんだけどさ
うんって言ってくれないんだよねぇ。」
「また今度ゆっくりな
2人とも飲み過ぎんなよ。」
「じゃあ今度は絶対飲もうね、約束だよ。
ありがとうね、翔くん」
