
ビタミン剤
第25章 a mole tunnel
着衣の下の肌に生々しい情事の痕跡を残したまま
もう一度みだれを整えて
窓を全開して車内で2人分の混ざり合った匂いを
消し去る。
「まだ、大丈夫だろ。
それよりおまえその顔、なんとかしろ
つい今までしゃぶってたってのが
ばればれだせ。
物欲しそうな色気が垂れ流しででてる。」
「だって……翔くんが…
店に着くまで舐めとけって言うからだよ
俺は言うとおりに…しただけだもん」
翔くんが笑いかけてくれる
ようやくその瞳に俺の姿をまっすぐに
とらえてもらえた。
「んなこと言ったか?
おまえが勝手にファスナー下ろして
咥えてきたんじゃなかったか?」
おだやかな笑顔はテレビ画面でよく見る
いつもの柔和で優等生的な櫻井翔の微笑み。
「俺ね…
ちゃんと翔くんの言うとおりにするよ。
だから安心してね
潤のこと守るし、きちんと報告するから」
「おまえはマジで使えるヤツだよ
イイ子にしてたら、またすぐに
おまえのほしいものやるからな。」
来週の地方の試写会
俺のスケジュールを知ってることだけでも
驚くのに、
翔くんも同じ地方でロケが入ってるらしく、
俺が宿泊するところと同じホテルを
予約しておいたと言ってくれた。
