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ビタミン剤

第5章 夏まつり



ようやく
妹に呼ばれたのは2時間近くが過ぎたころ。
やけにきらきらした瞳で興奮気味な
口調でさっさと歩いてとまくし立てられる。


「お兄ちゃんっ!
今回のはかなりの自信作だから
ニノくん
ヤバいくらいキレイで可愛いからね。
腰抜かさないでよ?
あ、写メ撮らせてもらわなきゃ。」



キャイキャイうるさい妹が
扉を開けると
後ろ向きに立ってるニノがいる。

なんか、いや、あのマジで
シルエットは完全に女子にしか
見えなくて、
少し小首を傾けて両手は結んでる
のかな、身体が揺れている。



「かず?」


紺色の浴衣の襟元から見える
うなじが白くて華奢で
生唾を飲み込む俺がいてた。


ロングヘアーのウイッグの黒髪は
片方でひとまとめにしてあって
可愛い簪が飾られてる。
ゆっくりと振り返る姿はまさしく
見返り美人画のようで
瞬きするのさえ忘れてしまう。


団扇で少し顔を隠すニノが
笑わないでよって言うけど、
見惚れてしまって
笑うどころか言葉を失うって事
を初めて経験した。


無造作ヘアーはフェミニン風
を意識してなるべく輪郭を隠しす
ように工夫したとかなんとか言ってる
妹の言葉なんて全く耳には入って
なかった。

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