
ビタミン剤
第35章 縁結びの神さま
今度は智くんか泣きそうな顔するから思わず
吹き出しちゃった。
さっきまであんなに強気でオラオラに責めたり
してたのに。
「ウフフ違うよ。せっかくの智くんの作って
くれた手料理を食べたいんだもん。
温め直して食べてもいい?」
智くんが温め直してくれてる間にカレー具材の
蓋を開けて
手のひらに塩を多めにつけてお茶碗にこんもりと
盛って湯気の上がるご飯をふうふう冷ましながら
三角形のかたちでにぎにぎする。
きれいな三角形を作るのがけっこう難しくて、
スタッフさんにアドバイスもらって
実はこっそり練習とかもしてたんだ。
やっと智くんにお披露目できる日がきた。
後輩くん達に作ってあげたのはラップでくるんで
丸めて簡単に作ったおにぎり。
だけど智くんにはね、手のひらでしっかりと
握りしめて三角形の形を整えながら仕上げていく
おっきめのおむすびを作ってあげたい。
「おわ、でっけーおにぎり!
翔ちゃんめっちゃ上手じゃんっ」
「これは、おむすびだよ。
ちょっとぶさいくだけど愛情いっぱい込めて
握ってあるからね。」
「おにぎりとおむすび??
どっちもおんなじじゃねえの?」
「うん、おんなじだよ。
でも、おむすびのほうの謂れがね
産土の神さまの由来があるんだって
日本には古来から山を神さまに見立てる信仰があって、
その山の形に作って
産土神のさまのパワーをもらえるってね。」
