
ビタミン剤
第37章 サンクチュアリィ
撮影が終わって映画のキャンペーンで
全国を飛び回ってたあの頃
なんにも考えずにただ好きで好きで好きだと
想いだけを前面に押し出して抱いて抱いて
抱きまくってた。
付き合いだした当初から結末は露呈していた。
若気の至りって言葉だけで片付けるのには余りに
も陳腐で滑稽だった結末。
こいつの懐っこい濡れた様に見つめてくる
一途な想いを受けとめてやるだけの
度量なんて持ち合わせなど俺には皆無だった。
ほんの短い間の肉体と慾望だけの関係
自虐的な思考に陥ってた俺は
あの橋の上で
一方的に別れを告げて翔との関係を終わらせた。
宅配サービスの荷物として届いたのは2泊分の
食材と飲料類。
電源を差し込んでた冷蔵庫に適当に食材を
突っ込んでると、パーカーを着なおした翔が
降りてきて
暖炉の横のグランドピアノの前に立ってる。
昼メシのシチューの材料をキッチンに用意して
鍋とフライパンを選んでると翔が隣りにやって来た。
「なにつくるの?俺も手伝うよ」
「じゃあ野菜の皮剥いてて、長野くんから
教えてもらったレシピでシチューにするよ。
晩飯はデッキでバーベキューな?」
「2人だけで?なんか贅沢だね。」
「昼飯食った後で斧で薪割するぞ」
「ええーっやだよぉ」
「よぉし、昼からは体力作り兼ねて森の中
トレッキングもしような」
