
ビタミン剤
第37章 サンクチュアリィ
天気が良かったのでテラスで昼飯を食べることにした。今気に入っているカメラを構えながら
熱々のシチューと格闘する翔をレンズ越しに
覗いては何枚も何枚も撮影した。
翔と2人きりで過ごせる時には
なるべくオフショット姿を撮らせてもらう
約束をしてる。
今もコーヒーを片手に立ち上がって
森の空気を胸いっぱいに吸い込みながら
周りの景色に見入っている姿をファインダー越しで
翔の姿を覗く。
大自然に抱かれて微笑む翔の自然な笑顔で
とてもきれいだ
「准一くんってば、あっちの山はなんて山?
もう、カメラばっかり触ってないで
こっちに来てよ」
「ん?ああ、向こうに見えるのが
南アルプスだったっけ」
ファインダーを覗きながら返事をして
カメラを向けると俺に向かってはにかむように
笑顔がこぼれた。
少し散歩がしたいな
翔の希望で俺らは建物の周りを散策をすることにした。
深緑の香りが心地いい
木洩れ陽が差し込むこの森は私有地だから
誰かがはいりこんで来ることはほぼない。
朽ち木につまづきそうになった翔の
手を握ってやりながら
落ち葉が深くなる森の奥へと歩き続けていく。
風でゆらめく葉づりの音
姿の見えない鳥たちのさえずり
森の息吹きに抱かれて深呼吸すると
澄んだ空気が体内を浄化してくれる気がする。
少しだけ歩みをゆっくりにすると
翔の吐息が耳横で聞こえる
「ねぇ、准一くん…、どこまで行くの?」
「もうすこしだよ。」
