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きみがすき

第23章 *ぜろ*

*大野*





桜の花が少し散り始めたころ


俺たちは付き合って初めてのデートをした



**

…あ、いた。


相「あ!大ちゃーん!こっちこっち!」

俺が見つけたと同時に、大きな声。


うん。だからちょっと声でかいよね。


こっちこっち。と言いながら走ってきてくれる相葉ちゃん。


遠くからでもわかっちゃう、その笑顔。


俺も走っちゃうよ?


だって…


会いたかったから。


相「お待たせー。」


俺の台詞だよね。
「俺の方こそ、待たせてごめんね。
定時で上がれなかった。」


相「ぜーんぜん!仕事お疲れ様。疲れてない?
荷物持とうか…ってあれ?荷物は?」


「邪魔になるかなって、駅のコインロッカーに入れてきちゃった。」


相「そっか。疲れたら言ってね。
抱っこしてあげるから!」
と力瘤ポーズを真面目顔でする相葉ちゃん。


「っいらないよ!自分で歩くわ!」


相「えー?残ねーん(笑)

くふ。じゃ、行こっか♪」

と、俺の手を掴んだ。


「…ぇ」


相「?どうしたの?」

どうしたのって…

「えと…手を繋ぐのは…ここじゃちょっと…」

流石に人目が気にならない?


相「……そう?…残ねーん。」

そう言って、ぱっ。と離された手。


…あ

プラン。と俺の脇に戻ってくる。



……

…俺って我が儘だ

離して欲しいって言ったのに

あっさり離されたら寂しいなんて…



相「あ、大ちゃん。」


「え?」

その声に下を向いていた顔を上げる。

「っ!!」

その瞬間、ぎゅっ。とすきな香りに包まれる。

それは…ほんの一瞬で、あっという間。


…でも…

俺の顔は…きっと


相「ふっふー♪真っ赤♪」

…だろうね。

相「行こっか。」

そう言って眩しい笑顔。

くるり。と背中を向けて歩き出す。



…狡い…


いや、どれが狡いかって話だけど


思わず相葉ちゃんが握ってくれた手で口を覆う。


相「大ちゃーん?早くしないと桜、全部散っちゃうよー?」

俺が着いてきていない事がわかっていたかのように振り返り
ニコニコと笑っている。



…やっぱ、ずりぃ…


…でも


うん…。


手の下で、思わずにやけてしまった唇を整え


「そんな急には散らないでしょ。」


大すきなひとの元へ、駆け寄った。

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