きみがすき
第23章 *ぜろ*
…あれ?
「どうしたの?」
って聞いたのは俺。
相「ん?なにが?」
…
なにがって…
…
……
なんだろ?
でも…
なんか…
相「…大ちゃん…?」
そしてこの前の様に驚かせちゃったのも俺。
さっき…一瞬だけ見えた、表情。
それは…ホッとしたような
…でもどこか不安そうな
そんな表情。
ねぇ…
「なんでも言ってね?…俺で良かったらだけど…」
そしてそれが、もし…俺のことなら…俺のことで、悩まないで。
ぎゅう…。と思わず抱き締めてしまった相葉ちゃんの細い体。
俺の頭じゃ相葉ちゃんの気持ちを汲み取ることなんてできなくて…だから当たり前だけど気の効いた言葉なんて全然出てこなくて…
「なんでも言って」なんて言葉、相葉ちゃんは望んでなんかなくて、むしろさっきの表情だって見間違いかもしれなくて、全然検討違いかもしれない…けど…
相「ありがとう。」
腕の中から、聞こえた嬉しそうな声。
いいんだ。
たとえ間違ったって。
俺の想い。
まずは、伝えることから始めよう。
そう思う。
と、
そんな俺に負けじと、ぎゅう。と腰に回った腕。
相「ふふ。つーかまーえた♪」
「え?捕まえた?」
相「鬼ごっこ。」
「へ?鬼ごっこ?」
相「うん。鬼ごっこ。大ちゃんの負けー(笑)」
…なにそれ(笑)
てことは、俺は自分から鬼に捕まりに行っちゃったってこと?
「じゃぁ…今度は俺が鬼だね。」
相「うん。だからさ
ちゃんと、俺を捕まえてて。」
そう言って少しだけ体を離して、悪戯っ子な笑みを浮かべつつ俺を覗き込む。
捕まえてて?
捕まえてね。じゃなくて?
もう俺は相葉ちゃんを捕まえちゃったの?(笑)
そんなの
「いいよ。俺、けっこう脚速いからさ、
たとえ相葉ちゃんが逃げちゃっても、直ぐに捕まえちゃうからね?」
なんて、ちょっと恥ずかしい台詞。
でも、そんな事を言えちゃうのも…相葉ちゃん。だから。
相「ふふ。絶対だよー?」
と、相葉ちゃんは楽しそうに笑うと、俺の腰に回った腕をゆっくりと緩め
その手が、優しく俺の頬っぺたに触れる。
少しだけ色素の薄い、綺麗な瞳。
その瞳が弧を描く様に細められる。
そして
俺は…ゆっくり目を閉じた。