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きみがすき

第24章 *いち*

*松本*




相「♪~♪♪~♪♪~」


ご機嫌だな。


あ、俺じゃないよ。


店がcloseしたのは、1時間前。
今は店の片付けと、明日への準備を行っているところだ。

昨日から今日にかけて、世間では休日ってこともあって、コンスタントにお客さんが来てくれた。

有り難いことだ。

今でこそ、閑古鳥が鳴くことなく忙しく働けているが、店をopenした当初は、なかなか客足が伸びずに結構辛い時期があった。

毎日、何が良かったか、良くなかったか。
さりげなくお客さんから情報収集したり、周知方法を変えてみたり。
他の店に食べに行って参考にさせてもらったり、この道の先輩方に話を聞いたり…。

思い付くことは、何でもやった。

他にも、休日を返上して料理の試作をしたり。
食材も少しでも安く良いものをと、何度も何度も地方へも足を運んだ。

そう…俺がそこまでできたのも、何より雅紀の存在があったからだ。
俺が動きやすいように、スケジュール空けたくれたり、文句ひとつ言わずに付き合ってくれた。

ま、時には意見が白熱することもあったけど。それだけ真剣だってこと。


俺ひとりじゃ…雅紀が居てくれなかったらこの店をここまでもってくることはできなかった。

そう思う。


まぁまだまだだけどな。

と、明日用のデザート作りに専念している雅紀を横目で見ながら、そんな事を考える。

BGMを止めた店内に流れる雅紀の鼻唄。
確か…アイドルグループの…ラブソングだ。



一足先に仕込みを終えた俺は、店の入口へ向かい、春用に飾りつけをしたオーナメント達を外していく。


相「そっかぁ、春ももう終わりなんだね。
なんかあっという間だねー。」

いつの間にか後ろにいた雅紀。

「だな。春なんて味わう事なく終わっちったな。」


相「あ、俺、お花見しちゃった♪」


「嘘?いつ?」


相「この前の休み。俺だけごめんね。」
いひひ。とそれは嬉しそうに笑う。

あー

「大野さんとか。」


相「え?なんでわかったの?!」

なんでって…

「顔見れば直ぐにわかるわ。」


相「え?顔?」
そう言ってペタっと顔を触る。

うん。安定のナチュラル。

「仲良さそうで何より。」


相「え?……えへ。うん。仲良いと思う。」
今度は、幸せそうに笑った。

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