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きみがすき

第3章 *ニ*



大野さんは席に着くと、水槽のガラスを指でつつき魚と遊んでいる。

櫻「ねぇ智くん。」

大「ん?」と手を止めて櫻井さんを見る。

櫻「何があった?」

と優しいけど、しっかりとした声が聞こえた。


そんな直球?!と驚くと共に、俺の隣で大野さんの体がピクッと震えるのがわかった。


大「…え?何?何にもないけど。」と少し間があったあと、ゆったりとした口調で大野さんは答えた。

櫻「智くんさ、昔から嘘下手なんだから。それか俺にも、言えないこと?」と大野さんから目をそらさない。


****

何分経っただろう、誰もなにも話さない時間が続く。他の席から聞こえる話し声や、カチャカチャと食器がぶつかる音だけが聞こえる。



…俺、すげー居にくい…。帰ったほうが良いのかなと考えてたいたら、



…はぁ…と、息を吐き、
翔くんには、かなわないな…。と、大野さんの澄んだ声が聞こえた。

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