きみがすき
第28章 *ご*
そう思って良く良く見れば…
ズボンには所々穴が空いてて、ベルトには骸骨のバックル。手には、ゴツゴツとしたシルバーのリングにブレスレット。
上の方を見れば…何個穴が空いてるの?ってほど色とりどりのストーンが耳の縁を覆っている。そしてワックスで立たせるように固めた髪は、意外にも真っ黒だった。
…
……
いや、流石の俺もこれだけインパクト強い人。忘れないと思うよ。
って事は、気のせい?
*「ね。おにーさん何歳?」
と、向けられた顔。
ニコニコと服装とは不釣り合いなほど、人懐っこい笑顔。
「なんで?」
そんなこと聞くんだ?
*「報酬ってことで。教えてよー。」
報酬…
「…今年29。」
答えてしまった。
*「え?!29?見えねーな。若く見えんね。
俺は22歳。いちおー大学生。」
にかっ。と笑ってピース。顔と口調が合ってない。
大学生…
……あー…そか
タケちゃん(大学時代の友人)だ。
顔が似てるとかじゃないけど、人懐っこいのに口が悪いとことか。
だからか…会ったことがあるような気がしたのは。
*「じゃ、お名前は?」
と今度は首を傾げて、俺の顔を覗く。背…相葉ちゃんくらいだ。
…てか、マジでナンパじゃねーよな?
「…大野。」
これも報酬?と思いつつ、なんでか答えてしまう俺。
タケちゃんに似てる。っていう安心感…?
*「……おーの…」
「?うん。大野。」
*「ぁ…うん。大野さんね。
んじゃぁ…おおの…おーのでおーちゃんか。
俺はイチト。イチでいーよ。」
そして、
よろしく。と右手を俺の前に差し出した。
…
握手ってこと?
イチ「ほらー早く。俺の腕、さっきので疲れてんだから。」
変わらずニコニコと笑う。
よろしく?なんで?
疑問に思いながら…でも俺は左手を前に出した。
と、
ピリリリ…!
と鳴った音。に、一瞬体がビクッとする。
あれ?マナーモードにしてあったのに?
ごめん。と握手用に出した手でポケットを探る。
ピリ…。と取り出す前に鳴りやんだ携帯。
あ、メールか。
画面を見れば…
相葉ちゃん。
それだけでトクン。と跳ねた心臓。
なんだろうこんな時間に??
もう、仕事に行ってる時間じゃ…
なんて不思議に思いながら、画面をタップした。