きみがすき
第28章 *ご*
パッ。
と明るくなった画面。
そこには
青空にかかる、なないろの虹。
そして
《にじー♪一瞬雨凄かったね!
大ちゃんも見れた??一緒に見たかったな。
仕事頑張ります!》
そのメッセージに慌てて空を見上げて見回したけど、虹はなくて
そりゃそうか…相葉ちゃんの所からだいぶ離れてるし。ここは雨も降ってない。
でも残念…
視線を下ろして画面に広がる虹を再度見る。
それだけで…
ふっ。と顔が緩むのがわかった。
ありがとう。
やっぱり。今日お店に行こう。
お客さんとして行けば邪魔にはならないよね。
あ、そうだ。この鯛、写真撮って送っちゃおう。
流石にお店に持ってくのはあれだしね。
イチ「恋人?」
「…え?」
声に前を向けば……あ…忘れてた。
イチ「恋人から?」
「…うん。」
イチ「ふぅん。すきなの?その人のこと?」
…え
「そんなの当たり前…」
イチ「当たり前?」
被せるように返ってきた言葉。
その顔は
イチ「たまにさいるじゃん。
すきでもないのに告白されたから付き合いました。タイプだったから付き合いました。」
さっきとはまるで別人のような真剣な顔。
そしてゆっくりと距離が詰められる。
イチ「金。持ってそうだから付き合いました。使えそうだから、付き合いました。」
言葉と共に…イチトって人の右手が俺の後頭部に回され、体が引き寄せられる。
…な、に…?
そして…ゆっくりと顔が近づいてきて…
イチ「俺ね…そーいう奴、大っきらいなんだよね。
……おーちゃんは、違うよね?」
そう耳元で囁いた。
っ…
………
イチ「あは!なぁんてね!」
ぱっ。と離れたその顔はもうニコニコと笑う。
……俺…
イチ「あれ?大丈夫?
驚かせちゃった?ごめんね、おーちゃん?」
「…ぁ…ううん。」
イチ「さ。んじゃ俺はそろそろ行こうかな。
ね?おーちゃんまた来る?」
「…時々ここには来てるよ。」
イチ「じゃぁ今度会えたら、釣り教えてよ。」
「…うん。…いいよ。」
心臓が…痛い…
イチ「やった!絶対、また会おうねー。
そいじゃバイバイキーン♪」
軽快な足取りで、はひふへほー。とか言いながら、手をブンブン振って離れていく彼。
………
俺は、その背中を見つめたまま暫くそこから動くことができなかった。