きみがすき
第31章 *はち*
ガタガタ。
電車が揺れれば俺も揺れる。
こっくり…こっくり…
そんな俺の隣には、こっくりする度に姿勢を直しては、また眠りにつく相葉ちゃん。
相葉ちゃん寝ちゃった。
電車に乗って直ぐ。大きな欠伸をした相葉ちゃんに、寝ていいよ。と声をかけたのは俺。
こっくり。
する度に、あぁっ倒れそうっ…って、ちょっとヒヤヒヤしちゃうけど(笑)
帰宅ラッシュに巻き込まれるのもね。
と、少し早目に帰ることにした俺達。
その甲斐あってか、電車の中はガラガラだ。
スー…スー…
聞こえてくる寝息。
…
……
…やっぱり疲れてるよね。
夜中に仕事が終わって、午前中から出掛けてたらそりゃね。
眠いよね。ずっと働いてるもんね。
そんなの…ちょっと考えればわかることなのに
待ち合わせの時間。もっと遅くにしよう。
くらい言ってあげれなかったのか俺の馬鹿!
…なんて今更だよね。
相葉ちゃんに早く会いたいって気持ちの方が確実に勝ってたし
それに、うん。楽しかった。
きっと…相葉ちゃんも楽しかったんじゃないかなって
そう。思いたい。
と、
ガタン。
大きめの揺れに、今度こそ倒れそうになった相葉ちゃん。
でも…コテン。とその頭が俺の肩に乗ってきて
ピキーン!て固まっちゃった俺。
…
ん?……あれ?起きない?起きなかった?
やっぱり相当疲れてんのかな…
そんな俺の手には、携帯。
湖で遊んだ後「写真撮ろうよ」って、湖を背景に2人で撮った写真を眺めてたんだ。
だって…初めてなんだもん。
2人で撮ったの。
てか相葉ちゃんの写真。
いいでしょ?嬉しくてずっと眺めてたってさ…
相「…それ…いー写真だよね…」
ぽそ。と耳に届いた少し掠れた小さい声。
?!!
うえっ?!起きてんの?!
てっきり、さっぱり、がっつり夢の中だと思ってた相葉ちゃん、の声。
でも、尚も変わらない俺の肩にかかる重さに、体が揺れそうになったのを咄嗟に耐える。
スー…スー…
直ぐ聞こえてきた寝息。
なんか…写真見てたのバレてすげー恥ずかしいぞ。
いや、別に隠すことじゃないんだと思うんだけどさ。
スースー。と気持ち良さそうな寝息。
ふと。窓の外を見れば目的地はまだ少し先。
俺は持った携帯をそのままに
そのさらさらの髪に少しだけ頭を傾け
目を閉じた。