きみがすき
第32章 *きゅう*
笑ったイチは、空いてる方の手で グッ。と親指を立てた。
いやリスペクトって俺を?
…意味がわかんない。
イチ「でも おーちゃんさ、ここずっと元気ないよね。」
…
……
じゃぁなんだよ。
俺が元気ないって気がついてて…わかってて
何も聞かずにいてくれたの?
イチ「元気ない人がいたら、誰だって心配するっしょ?」
ね。おにーさん。と ニコっと笑う。
…
やっぱりイチの笑顔は相葉ちゃんに似てる。
けど違う。
…違うってわかってる。
でも俺は、その笑顔に会いたくて仕方がない。
*
あの日
俺達は誰もいない駅で 話をした。
相葉ちゃんが話してくれた事。
きっと今日まで…すごく考えてたんだと思う。
そんな相葉ちゃんに「待たない」と言ったのは俺。
…もう…待つのは嫌だったから。
それに………
そして俺達は、握っていた手を離した。
イチから連絡がきたのは翌日
《今日、そっち行くから遊ぼー♪》って
偶然。なんだろうけどびっくりした。
相葉ちゃんと話し合えたことに後悔はない。
けれど………
心にぽっかり穴が空いたような寂しさと、これからどうなるのか。という不安は…日に日に増すばかりで
そんな時
就活で近くに行くからと、頻繁に誘ってくるイチと、ただ釣りの話をしたり、仕事の話をしたり、他愛ない話をしている時間が、すごく有り難かった。
そして…
相葉ちゃんのように笑うイチに、相葉ちゃんを重ねてしまっていた…のかもしれない。
*
「イチも一緒にきて。」
イチ「いいの?」
寧ろこっちの台詞だ。
「うん。」
イチにとっては知らない方が良いことなのかもしれない。
ニノも松潤も…
けど…
イチ「顔こわー(笑)
おーちゃん?甘えられる人がいるっていーことだよ。」
そう言われて、ゆっくりと振り返れば
そこには、俺を見てくれている2人の瞳。
…本当だ。
良く見れば…心配そうに、でも優しい視線。
「そうだね。」
…ごめんね。
イチ「行こっか。」
ごめんね。
ごめんね相葉ちゃん。
一人で溜めとくには、俺…ちょっと限界みたい。
だから…
話すね。勝手にごめんね。
…ごめんね。
あとね
俺嘘ついた。
「待たない」
なんて言ったのは嘘だよ
ただの強がり
だだの弱虫
だから…
早く迎えにきてよ